【Nacsport】アルゼンチンのトップフライトチーム クラブ・アトレティコ・ウラカンでのライブ分析

【Nacsport】アルゼンチンのトップフライトチーム クラブ・アトレティコ・ウラカンでのライブ分析

ライブ分析は、よく質問されるテーマの一つです。

どのように行うのか?どんな機材が必要なのか?ライブ分析をおこなっている試合にどんな影響を与えるのか?

この記事では、アルゼンチンのクラブ・アトレティコ・ウラカンの実際のライブ分析の過程を見てもらい、アナリストチームが試合中の戦略的な意思決定にどのような影響を与えるかを紹介して、皆さんが抱えている疑問に答えたいと思います。

 では、さっそく始めましょう。

 

クラブ・アトレティコ・ウラカン コーチングスタッフ

現在、アルゼンチンのプレミアリーグでプレーするクラブ・アトレティコ・ウラカンは、ライブビデオ分析に多額の投資を行っています。そして、そこで働くコーチやアナリストのチームは、その投資に見合うだけの仕事をおこなっている。ディエゴ・ダボベ監督が率いるこのチームは、アルゼンチンサッカー界で豊富な経験を積んでいます。 

アシスタントマネージャーのギジェルモ・フォルミカと並んで、Nacsportファミリーの旧友であるパブロ・フォルナサリがいます。パブロは、ゴドイ・クルスとバンフィールドで働いた経験があり、アルゼンチンサッカー界で豊富な経験を積んでいます。彼は現在、ダボベ監督のセカンド・アシスタントであり、分析に関してはウラカンのベンチで重要な役割を担っている。

さらに、ディエゴ・カステロとマティアス・エレーラという2人のトップレベルのアナリストがチームを構成し、分析に関して豊富な知識をもたらしています。カステロの場合は、クラブ・デポルティーボ・マイプ時代からNacsportを愛用しており、現在ウラカンで使われているライブ分析システムの基礎を築いています。

 

 

ライブ分析での役割分担

ディエゴ・ダボべ監督を補佐する4人のコーチングスタッフは、機材が正しく作動するチェックから、ベンチからの戦略実行まで、ライブ分析が試合に直接影響を与えるための基本的な役割をそれぞれ担っています。

 

試合前: 確認と準備

アナリストの仕事は、キックオフの3時間前から始まります。ディエゴ・カステロとマティアス・エレーラの2人のアナリストは、分析に必要な資料をすべて持ってスタジアムに到着します。これが準備の開始であり、すべてが何事もなく進行するよう確認を行います。

機材の準備が完了すると、キックオフの約1時間半前に、さらに一連の確認が行われます。その内容は以下の通りです:

  • 無線LAN中継器の信号強度

  • ビデオ配信と受信品質

  • トランシーバーやその他の通信機器が正しく機能すること

これらの確認は、分析作業を何事ともなく行うために必要なものです。ウラカンがプレーするアルゼンチンのスタジアムには、一般的に1試合あたり平均3万〜6万人のファンが集まるため、これが難しい場合もあります。例えばこの大量の人間によって、信号強度の干渉が起こり、時には作業を困難にしてしまうこともあります。

試合中の様子:ライブ分析

ディエゴ・カステロとマティアス・エレーラは、通常は関係者部屋や塔などの高い位置に入り、そこからフィールド全体を撮影し、起きているアクションにタグ付けをおこないます。一方、第1、第2アシスタントコーチのパブロ・フォルナサリとギジェルモ・フォルミカは、ディエゴ・ダボベ監督と並んでベンチに座ります。

2人のアナリストは、試合中の職務を分担しています。1人は試合の様子を撮影し、もう1人は試合のタグ付け、ベンチへの関連クリップの送信、トランシーバーによるパブロ・フォルナサリとの情報交換などを行います。

ライブ分析用に、特別に設計されたタグ付けボタンテンプレートを使用して、ゲームにタグを付け、最も関連性の高いクリップは、お気に入りとしてマークされます。これはNacsportのライブ分析環境で利用できる機能で、アナリストが試合中やハーフタイムにベンチで見ることを義務付けているビデオクリップを作成します。

どんな映像が良いのか?試合中に、アナリストがチームを観察した長所と短所を示すものです。自チームでも相手チームでもかまいません。

ビデオクリップに加え、トランシーバーを使ってベンチに情報を送ることもあります。アナリストは、高い位置から見た試合の状況を伝えています。

ベンチでは、パブロ・フォルナサリがiPadでビデオクリップを受け取り、フォルミカと共有します。フォルミカはダボベ監督とプレーの合間に配信されたビデオクリップを確認して、意見交換することもできます。

時には、ハーフタイムにコーチングスタッフにクリップを見せるために、アナリストの1人がロッカールームに立ち会うこともあります。これは一般的なことではありませんが、分析の過程の一部として行われることがあります。

 

映像のストリーミングを可能にするNacsportライセンス

クラブ・アトレチコ・ウラカンは、ライブ分析作業にNacsport Eliteを使用しています。これは、包括的な分析ツール群を含む、Nacsportのフラッグシップである最高級の製品です。

ライブ配信については、Nacsport ScoutとProでもPlay-by-Playテーブルを通して行うことができます。当社のウェブサイトにおいて横並びで比較することで、ユーザーが利用できる、さまざまなライブ分析オプションについて知ることができます。

さらに、ライブ分析を配信するためのより高度なオプションも提供しています。Nacsport Coach Stationは、アナリストとベンチの間の効果的な情報交換のために、特別に設計されています。このプログラムでは、ビデオクリップだけでなく、ライブゲームデータを配信することができます。

 

試合を撮影するためのカメラ

当然ながら、試合を撮影するためにはカメラが必要です。ウラカンの場合、ソニーのハンディカム440を使用しています。これは、HD解像度のMP4フォーマットでの撮影が可能で、十分に良質な映像をベンチに送ることができる。

もちろん、他にもさまざまなビデオカメラが販売されています。どのタイプのカメラを使うかは、用途と予算次第です。ただ、そのカメラがこのような作業に必要な条件を満たしているかどうかは確認してください。

どのカメラを買うべきか、お勧めをお知りになりたい場合は、この無料のハードウェアガイドをご覧ください。

 

必要最低限な条件を満たしたパソコン

ウラカンは、分析作業用にIntel社i7プロセッサと8GBのRAMを備えたHP社コンピューターを使用しています。これは、彼らのライブ分析の用途に完璧に合致しています。

繰り返しになりますが、市場には幅広い種類のコンピューターがあります。Nacsportをライブ分析に使用するための最小要件と推奨要件を、当社のウェブサイトで確認されることをお勧めします。

同様に、上記で紹介したハードウェアガイドには、推奨コンピューターのセクションがあります。ダウンロードしてご覧になってみてください。また、本記事にはキャプチャーデバイスの項目がありますが、これについては後ほど詳しく説明します。

 

カメラとパソコンを接続するビデオキャプチャデバイス

ライブ映像を配信する場合、カメラをコンピューターに直接接続することができないことに注意する必要があります。コンピューターで読み込めるように映像をデジタル化するキャプチャーデバイスが必要です。

ウラカンでは、Avermedia Extremecap社の UVC/HDMIを使用しています。これは、Nacsportと問題なくに動作することが確認されているデバイスの1つです。※Nacsport Japan公式サイトのサポート→よくある質問→動作環境のカテゴリーには、WindowsとMacの両方で使用できる他の選択肢をご紹介しています。

 

ローカルネットワークを構築する中継器とルーター

ウラカンは、ライブ配信にUbiquiti社の無線LAN中継器とルーターを使用しています。このブランドは信頼性が高く、適切な距離で強力な信号を提供してくれます。この2つのデバイスは、2台の作業用コンピューターだけが接続できる限定されたローカルネットワークを構築し、外部からの干渉を最小限に抑えることができるのです。

 

IPad2台でストリーミング映像の受信を実現

ウラカンでは、映像配信の受信機として2台のiPadを導入しています。ひとつはiPad Pro、もうひとつは第8世代のiPadです。基本的な違いは、デバイスの大きさです。試合当日は、できるだけ見やすくするために、一般的に大きいほうを使います。

ウラカンはiPadを使用していますが、実はウェブブラウザがあれば、Androidタブレット、セカンドコンピューター、携帯電話など、どんな端末でも画像を受信することができるのです。

これはウラカンの分析システム特有のケースですが、受信装置はウェブブラウザを搭載しているものであれば、どんなものでも使用できます。

 

ライブ分析のための機器接続方法

今回もNacsportを使ったライブ分析の方法は様々ですが、ここではクラブ・アトレティコ・ウラカンでのセットアップについてご紹介します。

 

ベンチでの準備

全体の流れとしては、ベンチに機器を準備するところから始まります。

ルーターが設定され、iPadが無線LANに接続されます。ここではローカルネットワークについて話しているので、実際にはインターネット接続は必要ないことを忘れないでください。

無線LAN中継器がルーターから信号を受け取り、スタジアムのアナリストのいる場所に信号を送ります。

ルーターは、中継器とバッテリーの両方に接続されています。実は、中継器もルーターもバッテリーで駆動しているのです。

 

信号の受信とアナリストへの接続

ベンチの近くにある中継器から信号を送り、それをアナリストの近くにある2つ目の中継器が受信する。つまり、ポイント・トゥ・ポイントの接続が確立されているのです。

受信機とコンピューターはLANケーブルで接続されており、より信頼性の高い接続が可能です。階段下のベンチでは、すでに信号強度が高いため、ケーブルは必要ありません。

 

ライブ配信の開始

すべての機器の接続が完了し、信号が働くようになると、Nacsportのライブ分析環境が開かれます。

ソフトウェアには、ネットワーク内の他の機器と共有されるIPアドレスが表示されます。すべての機器が接続されると、プレイ・バイ・プレイのテーブルを通じてデータを送信するプロセスが開始され、ライブ分析が開始されます。

 

2つの情報共有方法ビデオクリップ口頭伝達

本記事では、チームが使用するトランシーバーのことを指しています。厳密には必要ではありませんが、全体の情報共有を円滑にすることを可能にするものです。

実際、ウラカンのライブ分析の過程では、トランシーバーによる口頭での情報共有と、Nacsportで分析されたビデオクリップを配信するという、2つの異なる情報共有方法が行われています。

この2つの情報共有は、ベンチとアナリストの双方に十分な情報を提供する、補完的な方法なのです。

 

ライブ分析のためのタグ付けボタンテンプレート

ウラカンでは、ライブ分析のために特別に作られた専用のタグ付けボタンテンプレートを用意しています。このボタンテンプレートには、限られた数のボタンがあり、すべて20秒のプリタイムで自動的に設定されます。

なぜ、このような設定になっているのでしょうか?自動ボタンを使えば、ワンクリックでゲームアクションをタグ付けすることができるからです。ウラカンのアナリストは、キーボードショートカットを使ってこの作業を行い、時間を節約し、タグ付けを簡単にします。

プリタイムを20秒に設定したのは、彼らの経験から、これがフルプレーを観察するのに必要な典型的な時間であると判断したためです。

ライブ分析のタグ付けボタンテンプレートはこのようになっています:

このテンプレートはライブ分析にのみ使用され、この時に収集されたデータは、すぐに破棄されます。試合後に、アナリストは、セットプレーの分析用や、対戦相手の分析用など、さまざまなタグ付けボタンテンプレートを使用して、ゲームのさまざまな側面をより深く分析していきます。

 

最後にお礼を

Nacsportのスタッフ一同、記事の掲載を許可してくださったウラカンの皆さんと監督のディエゴ・ダボ氏に感謝いたします。

また、コーチングスタッフの皆さん、特にディエゴ・カステロとマティアス・エレーラには、本記事に掲載されている資料や情報の大半を提供していただいたことを感謝いたします。

皆様のご協力に感謝いたします。

 

原文作者:ダンカン・リッチー

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